「 この場なら描き続けられる 」画家・田中ラオウ[後編]
2024.02.29
IsaI JOURNALでは、IsaI AkasakA の入居者さまや赤坂エリアに拠点を構える店舗や人物を特集し、この地の魅力を未来へと繋いでいきます。
前回のvol.1 では、画家の田中ラオウさんご自身の過去から現在について伺いました。
vol.1に次ぎvol.2では、作品作りにかける想いやIsaI AkasakAと赤坂の魅力、目指す今後の展望についてもお話いただきました。
生み出し、積み重ねる
– – 田中さんの作品は、迫力があり力強い印象を受けます。
ラオウさん:僕は「かっこいい」とか「上手」とか直感的に思える絵が好きなので、作品作りにおいてはある程度写実性を持たせながら見る人の想像が膨らむような世界観を意識して描いています。画家は自分のスタイルを見つけ、それを尖らせていく必要があると思っています。
僕が動物をモチーフとして描くのは、生き方の純粋性や動きの躍動感に魅力を感じるからです。動物の視線の先や、キャンバスの余白に生き物の息遣いや動きの余韻が感じられるように描いています。鑑賞者が絵に描かれた動物を見て自分を投影させたり、心が奮い立つような感覚を覚えてくれたら本望です。
– – 「想像力を掻き立てる絵を描きたい」と拝見したのですが、作品作りにおいて意識されていることはありますか?
ラオウさん:日頃から向き合うべきもの以外には目を向けないようにしています。例えばネットのニュースにいちいち反応しないとか。でも、そうは言いつつ、僕もあーだこーだ言いたいタイプなので、そうならないように自制しているんです。向き合うべきもの以外に時間を費やしても、けっして何も生まれない気がしていて。画家が絵を描き溜めていくように、何か積み上がるものがある人生の方が振り返ったときに虚無感が無さそうなので、これからも自分のやるべきことに集中していきたいです。
赤坂は、歩きがいのある街
– – 赤坂という地域の魅力について教えてください。
ラオウさん:赤坂は都会的なイメージがある街ですよね。オフィス街でもあり、飲み屋も多いので、日夜活気に溢れている印象です。IsaI AkasakAに入居する前は「オフィスばっかり?」というイメージが先行していましたが、関わり出すと個店も多くあることに気づいて、今は「歩きがいのある街」だと思っています。入居してからまだ2ヶ月で、ゆっくり散策すらできていませんが、時間を見つけて開拓していきたいです。
– – IsaI AkasakAのお気に入りポイントがあれば教えてください。
ラオウさん:ハード面で言えば、このホテルライクな内装がお気に入りです。ジムやラウンジなど、共用部も頻繁に利用しています。実は、赤坂という立地条件も入居の決め手でした。職業柄、アートの聖地・銀座に絵を持っていくことが多くて。赤坂からだと、電車で10分もかからないのでアクセスしやすくて大変助かっています。創作以外の作業負担を減らせることはとっても有難いことなんです。
僕がアトリエとして借りているのはIsaI AkasakAの20階の一室です。こんな環境で絵を描けるなんて、大変恵まれていることだと思います。今後、これ以上のアトリエには出会えないと思います。これで創作活動に打ち込める環境が整ったので、この先はどれだけ作品を描き残せるか、ということに尽力したいです。画家がシェアオフィスに入居するという発想にはなりづらいと思いますが、僕は勧めます。画家同士や他業界の人と出会う機会もなかなかないので、シェアオフィスを通じてコミュニティを広げていけたらとも思っています。
膨らむ想像と励む創造
– – 最後に、今後の展望についても教えてください。
ラオウさん:僕らしく作品を描き続けられたと思います。お金のことを全く気にせず、思うがままに作品作りに励む画家もいますが、僕はそんな天才肌ではありません。僕なりに考えながら創作に励む必要があるので、ひたすら没頭できる場所に巡り会えたことは運が良かったです。この場所ならきっと僕らしく描き続けられると思っています。
いつか、IsaI AkasakAのラウンジで個展を開催できたらいいですね。入居者さんやファン向けにクローズドな個展でもいいかもしれません。部屋の壁にも大きな作品を描かせてもらえたらとか、想像は膨らむばかりです。
田中ラオウ〔 画家 〕
1985年生まれ。北海道札幌市出身。2006年、東京にてカリカチュアアーティストとしてのキャリアをスタート。2014年、米ネバダ州にて行われたカリカチュアの世界大会【 ISCA convention 】で優勝。カリカチュア世界王者となる。2016年、画家に転身。2020年に初個展【 田中ラオウ絵画展〜虎は風に従う〜 】を開催。2019年にはAdobe Japan Prerelease Advisor就任。世界最大のクリエイターの祭典【 Adobe MAX 】にて、この年唯一の日本人によるセッション【 Adobe Fresco Dojo:Japanese Blackbelt Illustrators Draw Live 】に登壇。